著者しんめいPさんの、「自分とか、ないから。教養としての東洋哲学」。
タイトルだけではどんな内容か想像もつかなかったけれど。
「なんだか不安で胸騒ぎがして落ち着かない」自分の心が、穏やかに。
心の平穏がほしいと思っている方は、読んで絶対後悔しません。
ネタばれしないように内容紹介は控えつつ、この本の魅力を伝えていきます。

どんな本?スピリチュアルじゃなく「超論理的」な救いに納得
悩んだとき。答えを求めてスマホで検索することってないですか?
わたしはついやってしまいます。
「〇〇な人 心理」「〇〇なとき 対処法」とか。
でもそれで解決したら、苦労はしないんです。
だいたい検索結果は「他人は変えられないけど、自分は変えられる」云々、もう知っていることなんですよね。
でも安心してください。本書は東洋哲学の話。
ちゃんと解決法(新しい考え方、ものの見方)を示してくれます。
というと、え?どんな?ちょっと想像つかない…という声が聞こえてきそうですね。
確かに哲学って、概論的で小難しいイメージありますよね。
日常の悩みとはちょっと遠いところにあるような。
でも私たちの思っている哲学はだいたい西洋哲学らしいのです。
対する東洋哲学は、自分の内面や自然と向き合うのが基本。
探求するにあたって「修行」をし、「悟り」という結論に至る。
テーマも、答えに対するアプローチもちょっと身近に感じませんか。
東洋哲学の思想家に、ブッダや老子・荘子、空海がいます。
名前こそみんな知ってるけど、実は知らない。
どんな風に自分と向き合い、悩み、答えにたどり着いたのか?
7人の東洋哲学者の生き様を(面白おかしく)学びながら、彼らの導き出した答えに触れることによって、気持ちが軽くなること間違いなし。
自分に疲れた。気持ちが不安定。大丈夫じゃない人に読んでほしい
なんとなく不安、がずっとある人。
疲れている人。
なにもしたくない、なにもかもがめんどくさい気分になっている人。
誰しもがそんな時期があると思います。
わたしもそう。この本を手に取ったとき、仕事の適正や対人関係に悩んでいました。
もっと自分を見直したほうがいいのかな…。
今後どんな道に進めば楽しく生きていけるんだろう?
考えるほどわからなくなって、危うく「出口の見えない自分探し」が始まりそうでした。
そんなとき目に入ったのが「自分とか、ないから。」のタイトル。
吸い込まれるように引き寄せられていったのでした。
他者と自分、社会と自分。みたいなところで私たちは悩みがちだけど。
そこにこの世はすべてフィクション。自分さえもね!というぶっ飛んだ視点が入ってくるのです。
切り口が斬新すぎる。
全くなかった新たな視点。
今までが「客観的」に考えていたとしたら、「達観的」?くらいに飛躍した感じ。
「悩み」から強制的にズームアウトさせられてしまう。もう小さくなり過ぎてよく見えないや…みたいな。
世界観が揺らぎ崩れる感覚を、ぜひ本書で楽しんでほしいです。
もうひとつ、内容そのものはさておき。
実は、本書は「文章で食べていきたい」人にも、読んでほしい。と思っています。
難しいことを伝えるときのわかりやすさ、読みやすさ、面白さ。
どんどん読み進めたくなる文章や、ユーモアのセンスは研ぎ澄まされ過ぎて、もはや嫉妬を通りこし、拝みたくなってきます。
そんな文章力も含め、この本を特に勧めたくなる魅力がまだある。
圧倒的な3つの魅力
この本を読むまで、東洋哲学という存在さえ知らなかった自分。
当然、同じジャンルの著作との比較はできないわけで…。
そんな私でもはっきりと感じることができた、この本の特徴3つ。
「読む」んじゃなくて、つい読まされてしまう。
だって、身近でわかりやすく、面白い話が書かれているのだ。
離脱する理由が、ない。
この3つの魅力を具体的に掘り下げていきます。
身近で現実的。著者にしかない奇跡のリアリティ
自分の経験を例に、東洋哲学をわかりやすく説明してくれる著者。
しかし、その例が…なかなかの失敗談。
これ知られたくないよな…という恥ずかしいエピソードをこれでもかと晒す。
文章で発信するまでに、何度も躊躇したんじゃないかな…。
包み隠さず自分をさらけ出す姿に、私たち読者たちは心をつかまれてしまいます。
エピソードが強烈だから、つい忘れそうになるけど著者は超絶あたまがいい。
なんと東大の法学部出身なのだ。
実際、難しい東洋哲学の本をたくさん読めている。
普通の人ならぜったいに挫折しそうな、というか手に取ることもないような本を。
万が一、読破できたとしてもだ。
こんなにも簡単なことばで説明できる境地まで、たどり着けない。
ここに著者しんめいPさんにしかない、2つのリアリティが存在する。
この相容れない二つの要素を、併せ持つしんめいPさん。
彼にしか書けない、彼だからこそ書ける。本全体を通して、そんな納得感があるのだ。
もはやテーマが東洋哲学じゃなかったとしても。
彼が書けば、面白い作品になる。と確信してしまうのです。
感嘆するほどの、内容のわかりやすさ
この本を手にする人って「自分に疲れてる」人だと思う。
こんなことを言ってはアレだけど。
「東洋哲学」に興味をもっていたというよりは、なんとなくタイトルに惹かれて、ふらーっと手に取るような感じ。
歩き疲れて、ふとそこにあったコーヒーショップに足が向くみたいに。
わたしもこの本を読み始めるまで、「東洋哲学」という存在を知らなかった。
ただ、自分の在り方や人との関わり方に悩んでいたときで。
こんなにも周りのことが気になってしまう自分が情けない。
他人軸で動き過ぎて、もはや本当の自分ってどんなだろう…?
そんなことを考えていたときに、「自分とか、ないから。」のタイトルに、すーっと引き寄せられていったのでした。
でも東洋哲学は、コーヒーブレイクみたいに手軽じゃない。
本来、めちゃくちゃ理論的で難しいらしい。
それをものすごくかみ砕いて、私たちが入りやすい状態に「激変」させたのが本書だ。
どのくらいに?
例えば、東洋哲学が「薬草を刻んだだけの太古の薬」だとして。
本書は、「こどもでも飲みやすく処方した、シロップ状の薬」くらいに違う。
もはや原型が想像できないほど、読みやすい仕上がりになっている。
そこには長い時間をかけた研究と工夫が詰め込まれているのだ。
著者が読んだ東洋哲学の本は50冊以上とか…。
実際、書き上げるまでに3年ほどかかったと、あとがきに書かれている。
わかりやすい、読みやすい、と言うけど具体的にどうわかりやすいのか?
それは、東洋哲学のロジックを身近にするために、自分の体験を例にしているところ。
「こんな風に説いているんだけど、実際、自分の身におこったことで考えてみると~」というよう感じだ。
東洋哲学思想には、一見、「はぁぁ?」と声が出そうに奇想天外な説が出てくる。
でも著者のたとえのおかげで、別次元にあった論理が、足元まで降りてきたような感覚に。
何かのネット記事で、「その人が本当に頭がいいのかを確かめる方法。」みたいなのを読んだことがある。
何か説明されたときに「例えば?」と聞く。
具体的な事例が返せる人は、本当に理解できて自分のものにしているということだ。
というような内容だったと思う。
まさにそれを地で行くのが著者のしんめいPさん。
激ムズの仏教理論でさえも、自分の身の周りのできごとに結び付けてしまう。
彼以上に東洋哲学をわかりやすく説明できる人、この世にいないんじゃないかと思う。
とこれまで「内容のわかりやすさ」を伝えてきたけれど、本は「ただわかりやすい」だけでは人に読まれない。
もうひとつ、絶対的に必要になのは「読んでて面白い」ことだ。
ユーモアあふれる文章表現
一度は芸人を志したことがあるという著者。
自分は全然面白くない人間だった、と書いていたけど。とんでもない!
本書を読んでいる間、ずっと芸人さんの話を聞いているような感覚がありました。
もし、その本がもともと「興味のあるジャンル」なら。
わかりやすく、読みやすければ最後まで読めると思う。
でも「勉強のために読まなきゃなー」とか、「表紙の絵や、タイトルで選んでみた」場合は?
わかりやすかろうと、「つまんない」と感じたら、挫折する可能性が高い。
なんとなく見始めたけど最終回まで見ないドラマや、連載マンガのように。
この本は?東洋哲学の本である。
そのジャンルに興味はなかった(というか知らなかった)。
それでも夢中になって、いつの間にか読み切ってしまっていた。
こんなふうに本を読みながら吹き出したり、笑いが止まらなくなることあったかな?
精神的にちょっと弱っているときだったから、特に。
元気になれたし、肩の力もふっと抜けた。
ネタばれしたくないから、具体的なエピソードは書けないけど。
思想家に対するツッコミや、ワードセンスは芸人さんにしか出せない味が出ていた。
芸人になるべく切磋琢磨していた時期が、全然むだじゃなかったと、この本が証明している。
この本に出会えて、わたしが変われたこと
本を読むと、たいてい学んだこと、感じたことがあるものですよね。
けど本書はそれ以上に、「影響を受けて、自分に変化があった」ので記しておこうと思う。
- 「他人にどう思われるか?」のアンテナが鈍くなった
- 自分に優しくなった
- ブログや文章を書くときの意識が変わった(ユーモアと自分らしさ)
自分が意識していた「周り」って、ものすごく不確かな、幻想みたいなものだ。
そんなふうに捉えられるようになったら、他者の視線は「どうでもいい」と思えるようになってきた。
「変わらずにいられるものなどない、自分さえも。」
そう意識すると、失敗しても自分を責めなくなりました。
反省したから、きっと成長するでしょう!と思えるように。
そして、久しぶりに「もっと魅力的な文章を書けるようになりたい!」という気持ちに搔き立てられました。
「わかりやすく」を意識して、ブログを書いてきたけど、何かが足りない。
そう思っていた矢先に出会った、この本のおかげで自分に足りないものがわかりました。
ありがとうございます。しんめいPさん!
この記事にはまだまだ反映できていないけど…
読んでいて楽しくなる、自分らしさが伝わるライティング。
すぐにはできないから、時間をかけて身につけていこうと思います。
ちなみに、この本との出会いは電子図書館がきっかけです。
借りて読んだのですが、その後、購入しました。
わたしにとっての心の漢方薬であり、文章を書く指南書なので。
いつでも手に取れるように、そばに置いておくことにします。

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